イオリ

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優しさ

 自宅療養中の恩師を訪ねた。

 見舞いの花を窓辺に飾っていると、暖かいだろう、彼が笑顔でいった。緑の山々から顔を出した日の光が、部屋中に広がる。そうですね、と僕はいった。

 数カ月後、再び訪ねた。体の方はまずまずと言っていたが、表情が少し暗かった。

 大したことじゃないんだがね、といって窓を指さした。

 冬だから仕方がないんだが、どうしても日が昇るのが遅くてね。

 前と同じ時刻だったが、確かに日差しは弱かった。

 残念ですね、と僕はいった。

 
 その日の午後、関係各所に連絡し、一晩で山をすべて削り取った。

 日差しは早く届くだろう。暖かいと感じてくれるかどうかはわからない、あとでそう思った。
 
 
 

1/28/2024, 12:06:44 AM