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ハッピーエンド(オリジナル)(異世界ファンタジー)

古代の重宝。
際限なく人の悪意を取り込み続け、持つ者の精神を蝕み、狂わせ、破壊の限りを尽くす魔剣があった。
魔術に優れた古代の技術ゆえ、解術もできず、破壊もできなかった。
コントロールは出来なかったが、巨大な破壊の力である。皆がそれを己の陣営に取り込みたがり、血で血を争う戦いが繰り返された。
やがて、ひとりの地上人が、その剣を手にする。
強靭な精神力を持つ正義の人であったが、徐々に精神を蝕まれた。
魔剣を狙う天上人や地底人の追撃から逃れ、北方の岩石地帯にまで追いつめられた。
天を埋め尽くすほどの天上人と、地を埋め尽くすほどの地底人が、彼を目指して殺到した。
彼は魔剣を空に掲げ、噴出する怒りや憎しみとともに、力を解放した。
(醜い者ども!!諸共に滅ぶがいい)
「うおおおおおお!」
剣から放出された黒い煙が、光のように高速で広がり、空を、地を、覆い尽くす。
バキバキと至る所で音がした。
黒い煙は、石化の煙であった。
一帯の膨大な数の天上人と地底人が、全て石となった。
空で石化した天上人が落ちて来て、石化した地底人に当たって砕ける。
剣を掲げた男も諸共に石となり、魔剣は大きな力を放出した反動で、力を失った。
魔剣を求める戦争が終わり、魔剣による被害者が出なくなった。
いわゆるハッピーエンドというやつだ。

けれど、最後に、かの魔剣を使った彼の仲間達は知っている。
彼がまだ正気の時に仲間を巻き込まないよう一人で出て行ってしまった事。彼は戦争を終わらせ、仲間や家族を守りたかっただけなのだ。決して死にたかったわけではなく、生きて戻ってくるつもりであったろう。
優しい彼の犠牲の上にできた平和であった。

3/29/2026, 12:33:43 PM