去り際彼の声だけが、鼓膜を伝って全身に響き渡る。いけない、電車。駅のホームに、ひとり。ほんの数分前の出来事すら、夢みたい午後九時を回った電車は、それほど混んでいなかった。車窓に映るわたしは、ひとり。ほんの数分前は、満たされていたのに彼がつけてくれた香水いまも、仄かに香る酔ってしまいそうな香りに、目が眩む。寂しくても、袖の匂いを嗅げば。クローゼットを開けるバニラ香る、昨日のおもいで。11/10「寂しくて」8
11/10/2025, 1:40:46 PM