空を見上げた。それは、全てを照らす白い月。
「はぁ……」
帰り道。私は一人、ため息をつく。まあ、確かにみんな楽しそうに騒いでたし、ちょっと賑やかすぎて疲れたのもある。
「まあ、楽しかったんだけどね」
けれど、別にそれは嫌いではないし、最悪ちょっと席を外しても誰も文句も言わないし。
けれど、『彼女』はそうではなかったのかも知れない。楽しそうな笑顔のなかに、不意に揺れる寂しげな表情が、私の胸に棘のように残る。
「満月かぁ…」
空には満月が浮かび、私の心の奥を照らすように淡く輝いている。
私の正直な想い、それは私の自己満足だとわかっている。けれど、それでも。
彼女が、嘘をつかなくてもよくなるように、と。
6/2/2023, 10:39:04 AM