たぶん、あの人のことを忘れる日は来る。
でも、今日じゃない。
まだ、机の隅に置いたランプみたいに、
弱く、でも確かに光ってる。
あの人の声を思い出すと、
胸の奥の空気が、少しだけ温かくなる。
それを“未練”って呼ぶのか、“記憶”って呼ぶのか、
まだよくわからない。
思い出は、誰かと囲んでた灯火みたいだ。
最初は明るくて、笑っていられた。
でも、時間が経つと、火がゆっくり小さくなっていく。
その小ささに、やっと気づいた夜。
――あ、もう終わってたんだ。
そう思ったとき、
寂しさよりも、少しだけ、安心した。
ちゃんと好きだったし、ちゃんと傷ついた。
だからきっと、次はもう少し、
優しくなれる気がする。
灯火は、もうすぐ消える。
でもその光があった時間だけは、
ちゃんと、私を照らしてくれた。
「灯火を囲んで」
11/7/2025, 1:34:22 PM