雪が降ってほしい、という私の願いが届いたかはさておいて本当に今日雪が降った。
空の上から降ってくる冷たい雪はじんわりと体温を奪ってゆく。
静かな白銀の世界を一人で歩いたり、誰も踏んでいない新雪を荒らすように足跡を付けるのは冬の醍醐味だ。
「先生を誘う前に雪だるま、先に作っちゃおうかな。」
さらさらの雪を手に取って強めにギュッと握る。
手がありえないほど冷たいが、可愛い雪だるまを作る為なので少し我慢。
今日雪が降るなんて天気予報のお兄さんも言っていなかったから手袋とかマフラーの準備もしていない。
制服にコートだけの身体に冷たい風が染み込む。
「さ、さむ…っ、マフラー巻いてくれば良かったなぁ…」
ずっ、と鼻を鳴らした瞬間後ろから肩を叩かれた。
わっ!という可愛い効果音付きで。
「せ、先生…っ!?」
「酷いじゃない。一緒にやるって貴方が言ったのに先に始めちゃうなんてさ?」
そういった先生は完全防備。
どこからどう見ても暖かそう。そしてモコモコに埋もれる先生は可愛い。
「雪を見たらテンションがあがっちゃって…」
「ふふ、面白い。…って貴方手真っ赤じゃないの。」
くすくすと笑っていた先生は私の手を見て青ざめたような顔をする。
そんなに…?と思い私も手元に視線を落とすと真っ赤に染まっていた。見ているだけで寒そう。
「風邪ひいちゃったらどうするの。…もう、貴方ってば世話がやけるんだから…」
そういった先生は首に巻いていた淡い色のマフラーを私の首に巻いてくれる。
ふわっと先生の柔軟剤の匂いがしてドキドキする。
真っ赤の手を包むように先生の指が絡まる。
先生の物に囲まれて失神してしまいそう。
「あ、ありがとうございます…。で、でも先生が…」
「貴方女の子なんだから体冷やしちゃダメでしょ。この雪だるま作ったら中にはいるよ。」
「え、えぇ〜!やだ、まだ作り始めたばっかりなんですよっ!」
「だめ、貴方が風邪ひいたら俺が悲しいの。だからダメ」
きゅっと口を結んでそんなことをいう。
ねぇ、先生。誰にでもそんなこと言ってるの?勘違いされちゃいますよ。
都合よく解釈しちゃうんだから。先生の思わせぶり。
「…わかりました。私も先生が風邪ひいちゃったら悲しいので中に入りましょう!」
「もう、…それでいいよ。さぁ、ココアでも入れようか」
大きさの違う足跡がふたつ並ぶ。
そんな2人の背中を雪だるまは見守るように見つめていた。
2023.12.18『冬は一緒に』
12/18/2023, 11:11:25 AM