イーシャ

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 僕は身体に風を受けながらただただ落ちていく。
 羽を持たない人間に抗う術はない。
 落ちる___落ちる___どこまでも。
 どのくらいたったのだろう、まだ僕は落下している。
 ふとおかしなことに気づく、目の前が真っ暗で何も見えない。
 それどころか自分が目を開けているのか閉じているのかさえ分からない。
 僕が今分かるのは身体に強く纏わりつく風の感覚と、自分が落下しているという感覚だけだ。
 どこまで落ちていくのだろう。
 どこか他人事のようにそんなことを考えていると、ふと身体に纏わりついていた風が消えた。
 ついに僕はもう何も感じられなくなった。
 目の前は真っ黒、一切光を通さない暗黒。
 音も聞こえない、手を動かそうにも動かし方も分からない。
 思考が止まっていく。目ってなんだ?音?動かす?手?言葉?さは、らなた、らはに......僕
 僕はまだ落下している。
 

 

6/18/2023, 11:57:00 AM