霜月 朔(創作)

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言い出せなかった「」



秋の空は、何処までも高く、
少し涼しくなった風が、
罅割れだらけの、
私の心を吹き抜ける。

どんなに後悔しても、
逆さに時は流れない。
なのに、私の心は、
そんな理さえ、
見えない振りをする。

お前は、あんなにも、
私に微笑みかけ、
側に居てくれていたのに、
言い出せなかった、
「お前を愛している」。

怒りで我を忘れ、
お前を傷付けておきながら、
自分の非を認められず、
言い出せなかった、
「私が悪かった」。

お前は、こんな私に、
再び手を差し伸べてくれたのに、
どうしても素直になれず、
言い出せなかった、
「もう一度やり直そう」。

私の心の中には、
お前に言い出せなかった、
「」達が、
瓦礫のように、
重たく積み重なっている。

そして、私は、
後悔に雁字搦めになって、
ただ、立ち尽くす。
言い出せなかった「」。
終わった恋の、墓標。

9/5/2025, 6:05:55 AM