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「見知らぬ町」


初めて来た町。
見知らぬ筈の町。

なのに、何故か既視感がある。
見た事が、来た事がある気がする。

この角を曲がればコンビニがあり、そこの路地にはポスト、その角にはバス停がある。

何故私は知っているの?
いつ、誰と来たのだろう?
そして、何故私はそれを忘れているのだろう?

解らない。何も、解らない。

そんな私の前にあの人が現れた。
懐かしい、あの人。
私が初めて、深く愛した人。

あの人に会う為に、私はここに来たのだろうか?

黙ってあの人の後をつける。
何度も角を曲がり、どんどん人気が少なくなる。
そして、角を曲がると、あの人は消えていた。

うらぶれた廃屋。

頭の中で危険なサインを感じる。
思い出すな、考えるな、引き返せ!!

猛烈な頭痛と共に、自分の中の何かが私に警告する。

でも、私は知りたい。
この見知らぬ町を私が知っている理由を。
そして、貴方が何処へ行ったのかも。

だから、自分の内なる声を無視する。
そして、壊れたドアを開ける。
そして、導かれる様に奥の部屋へ行き、畳を捲る。
そして、朽ち果てた貴方を見つけた。

ああ、だから私忘れてたんだね。
もう一度、忘れなきゃ。


8/24/2025, 10:28:40 AM