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#15『声が枯れるまで』

 席についたまま貴方の体がユラリ傾いた時、
 嫌な予感がして冷や汗が流れた。

 大きな目にはクマがひどくて
 軽く指を咥え、頭はフル回転
 安楽椅子ではしゃがむような変わった座り方。
 その曲がりに曲がった猫背は
 貴方の背負うものの大きさを
 そのまま表現しているようで。
 彼こそが世界の切り札、私の尊敬する名探偵。
 
 資料を摘んで見せて
 これどう思いますか、
 と聞く彼と一緒に考えたり
 休憩には世界各地のお菓子を食べたり
 スリリングだけど楽しい日々。
 誰よりも賢くて正義感の強い貴方の人柄や
 新たな一面を知れば知るほど
 側にいたい、支えたいと思った。

 慌てて駆けつけ何度も名前を呼ぶ。
 嫌だ嫌だ、私を置いて逝かないで__
 咽び泣いて落ちた涙が、彼の頬に伝う
 だんだん閉じていく黒い瞳には
 私の顔が写っていて
 もう聞くことのできないその声で
 優しく名前を呼ばれれば
 泣かないで、と言われたようだから
 無理やり笑顔を作って見せる

 お慕い申し上げます
 貴方に近づけるよう頑張りますから
 また、会いましょうね

10/22/2023, 9:55:38 AM