#小さな勇気
今となっては小さな勇気だけれど、
あの頃の小さな俺には大きかった勇気。
5歳の時、大量の借金を残して紛失した父親に
代わって母親がコツコツ身を削りながら、借金返済を
始めた。
6歳の時、頑張ってくれていたその母親が、
過労と精神崩壊で入院をした。
7歳の時、俺1人しかいなボロアパートに、
黒スーツのイカつい男たちが、若くて美形な男を
筆頭にやってきて、金目のものを探して家中を荒らす。
まだ幼かった俺には何が起きているのかも
分からなくて、ただただ恐怖だった。
そんな俺に優しく手を差し伸べてくれたのが、
黒スーツの男たちを率いていた笑顔が爽やかな男で
そっと俺に問いかけた。
幼い俺にもわかるように……。
「僕たちと一緒に暮らさない?」
怖かった。怖かったはずなのに、不思議と、
俺と母さんを守ってくれるような気がした。
今、手を取れば、母さんは助かるかもしれない。
でも、俺自身はどうなるか分からない。
臓器を売り飛ばされるかもしれないし、
良くないお店に入れられるかもしれない。
それでも、母さんを救いたいという思いが1番だと
自覚し、覚悟を決めて、持ちうる全ての勇気を振り
絞った。
そして、俺は、その手をとった。
数年経った今、俺と母さんは爽やかな男と
黒スーツのイカつい男たちと一緒に、幸せな生活を
送っている。
後に爽やかな男は母方の従兄弟だと知った。
あの男の家は由緒正しきヤクザの家らしく?
俺と母さんを探して、遠路はるばる、救いに来て
くれたという。
紛失した父親も探して縛り上げてくれた。
あの時に大きな勇気を振り絞れたことを
誇りに思う。
大きな勇気は今では小さな勇気に変わったけれど、
結果、母さんを救うことができて良かったとおもう。
1/27/2025, 11:58:55 AM