これは、戦い。
二人だけの。
彼女は正義のヒーローで、私は悪の王。
悪は正義に滅ぼされなければならない。
なぜなら、私がそれを望んだからだ。
倒されるために、私は悪の王になった。
すべては彼女のため。
彼女を、不幸のままでいさせたくはなかったから。
私は裏から手をまわし、彼女をヒーローに仕立て上げることにした。
悪である私を彼女が滅ぼせば、彼女は皆から認められる。
孤独に泣くことも、周りから蔑まれることもなくなるだろう。
誰かが共に笑い、誰かが共に悲しみ、誰かが守ってくれる。
一度そうなれば、彼女の本来の心の力で、その先もうまくやっていけるはず。
今まではただ、運がなかっただけなのだ。
きっかけさえあれば、彼女は輝ける。
そのきっかけを作るのだ。
しかし彼女は優しい。
私の目的を知れば、正義のヒーローとなることを拒否するだろう。
だから私は、目的を知られないよう、あらゆる手段で隠しきった。
私は絶対に、悪として正義の彼女に倒されて、退場しなければならない。
私が彼女にそこまでする理由。
それは大したものではない。
羨望だ。
彼女は、人に好かれる才能がある。
けれど、さっきも言ったように、ただひたすらに運が悪かった。
私は彼女の才能がとても羨ましい。
私もそんな才能が欲しかった。
だが、彼女はその才能を発揮できていない。
とてももったいないと思った。
勝手かもしれないが、彼女には、私の代わりに、私が望んだ幸せを掴んでほしい。
だから才能を発揮させようと決意したのだ。
ただ、それだけだ。
それだけの、くだらない理由だ。
さあ、始めよう。
私と彼女の、一対一の決戦。
彼女に倒されるための、最後の戦いだ。
7/15/2025, 11:01:27 AM