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ガタンゴトンと音を立てながら電車が、決められた路線を走っている。
周りを見ると少し古びていて明治時代の蒸気機関車のようだった。
ただ違うのは、電車の窓の景色を眺めると、本のページや映写機など様々な記録媒体が宙を浮いている事だ。かなり不気味で何故、こんなところが世界の中にあるのか分からなかったし、こんなヘンテコな電車に何故、乗ったのかも分からなかった。
しばらく、ガランとした車内を見つめていると、車掌室に繋がるドアが開いた。
ドアから出てきたのは、車掌らしき人だった。
手には、切符回収のための道具を持っていて、ゆっくりと私に近づいてきた。
私は鞄の中から切符を取り出そうとして気づいた。
そういえば私が切符を買った記憶は無かった。
とりあえず車掌に謝ろうと口を開くと突然、
「はい、2人分」と誰かが私の隣で車掌に切符を渡した。切符を確認すると車掌は元いたところに去っていった。
そして私は隣の席に座っている人を見た。
服装は探検家のようなベージュ一色の服に身を包み頭にはライト付きのヘルメットを付けている。
目の色やヘルメットからはみ出る髪の色からして日本人のようだった。
そして口元には人懐っこい笑みを浮かべていた。
「さっきは危なかったね。なんで切符持ってなかったの?」
「そちらこそ何故切符を2枚待ってるんですか?」
「そりゃ、探検家たる者予備は常に用意しないと」
ああ、やっぱり探検家なのねと。推測から確信に変わった。
「なんの探検をされてるんですか?」
「もう、やってないよ。死んじゃったから。」
「死んだ?あなたは今ここで動いてるのに?」
「あれ?君もしかしてまだ死んでないの?迷い込んだ感じかー」
「迷い込むって?」
「この電車はね、終点列車というもので、本来人生の終点、つまり死んだ人しか乗れないんだ。
けれどたまに紛れ込む人もいる。
そういう時はこの終点列車の終点で降りるといい。
そこが君たちが住む生者の世界だから。
死者だと肉体がない魂だけだからただ、見て回るしかできないけど生きているなら元通りだ。」
「それは良かったです。」
「じゃっ僕の話を退屈凌ぎに聞いてくれるかな。」
「はい」
「僕はね、さっき言った通り、探検家でいろんな地方のいろんな場所を、見て回ってたんだ。
日本も面白いところはいっぱいあったんだけどやっぱり一番面白かったのは、アマゾンだね。
アマゾンは暑くて危険もいっぱいだけど、生物が豊富で生き物の宝庫って言われてるんだ。
そこで僕はアマゾンの先住民と話したり、
川でピラニアやピラルクなどを見たりしたんだ。
まぁでもその後に川にうっかり落ちちゃってピラルクに跳ね飛ばされて死んじゃったんだよね。
こうして僕の人生は終点ってわけ。」
そう語り終えると、電車の方も終点だった。
私が降りようとすると探検家が「自由に暮らしな。そうすれば、きっと自分の終点がいいものになるから。」
その言葉を覚えて私は現世に戻ってきた。
お題終点
ここまで読んでいただきありがとうございます。

8/11/2024, 12:50:48 AM