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 アリの行列を見るのが怖かった。
 死骸に沸くウジを見るのが怖かった。
 怖くて怖くて、目が離せなかった。
 そんな様子を見て、周りの子たちは私のことを気味悪がった、助けてほしくてもそんなことは言い出せず、ただ一人その恐怖を堪えていた。
 ある時、そんな私の手をとって連れ出してくれる男の子に出会った。
 手を差し出して、そんなもの見てないで僕と遊びに行こうよと言う。
 今にして思えば、君は私のことに気がついていたんだよね。
 あのときの君の声は震えてた、今ならそう気づける。
 私は手をとって、君に釣れられて逃げることを選んだ。
 君が助けてくれたから、私は今、私でいられるんだよ。
 ありがとう。


 子供の頃、クラスに一人の女の子がいた。
 いつもアリの行列や動物の死骸にたかるウジを見て、薄く薄く笑っていた。
 怖い目だった。
 みんな怖がる中、僕は彼女にそんな顔をさせたくなくて、勇気を出して手を伸ばした。
 もっと楽しいことをしよう、そんなものがいない場所に行こう、そうやって連れ出していたら、いつしかそんな顔はしなくなっていた。
 僕は気づいている。
 あれは好きなのでも、興味があるのでもない。
 いつでも踏み潰せる、好き勝手蹂躙できる、そんな気持ちを押し殺している顔だった。
 怖くて怖くて仕方なくて、だからそんなことをさせないように連れ回したんだ。
 今君は、僕の隣で僕たちの子供抱えて笑っている。

 その子供を見る目が、今は怖い。

3/17/2023, 3:18:53 AM