束の間の休息
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目の前の彼女は小さく呼吸をおいて、あなたに残酷に宣言する。「今すぐ、寝てください」。ジッ…と私の瞳孔のさらに奥を見据えて、身をかがめていた。「私ってそんなに眠たそうかな?」、同居人はその高貴な視線から私を解放して、それから大きく溜め息をもらした。彼女の両手にひとつずつ握られたお揃いのマグカップからも、(彼女を怒らせるなんて)と溜め息をつかれている。「ごめん」、と、そっと触れるように目を合わせた。それで彼女はむくれたお顔を元どおりの可愛い顔にする。「淹れ方わからなくて、インスタントだけど…飲んで!」、彼女は左手側のカップを私の手に掴ませる。「ン、ありがとう」。ひとくち、ふたくち__コーヒーはその苦味と温もりを全身に満たしながら胃に運ばれる。「小休憩にするよ。…その間、ここにいてくれる?」、聞くと彼女はご機嫌に頷いた。
10/8/2024, 3:53:54 PM