テーマ『秘密の箱』
怒りだ。私がずっと抑え込もうとし続けてきたもの。それは、怒りだ。
怒ってはいけないという、呪いにかかっている。
怒りを出すことが、どうしてもできない。
怒り始めたら止まらなくなって、相手を傷つけてしまう気がする。
誰かを傷つけたらきっと私は、自分を許せないだろう。
ほんの些細なことだった。
簡単だが手順の決まっている軽作業を任された私は、納期を間近にして、ただひたすらにファイルを袋に詰めていた。
そこに、手順を知らない人が適当に見様見真似で割り込んできた。
教えていないのだ、正しい手順で袋詰めできるはずがない。
『手順がこうこうで、違いましたよ』。
翌日私は、作業の手順が間違っていたことを相手に伝えた。本当はその場で伝えたかったのだが、相手が他の仕事に呼ばれてしまってできなかったのだ。
その日、手順の間違いを伝えた数時間後。
私はてっきり、相手は「そうでしたか、ごめんなさい」と謝ってくるものだと思っていた。
しかし実際は違った。
その日は職場に人数も少なく、閑散としていた。
相変わらずファイルを袋に詰めていた私に、その人はこう言い放ったのだ。
『もう少し、言い方がありますよね』
怒りを含んだ口調だった。
言い捨てて相手は立ち去った。
その瞬間頭が真っ白になり、私はトイレの前で過呼吸と共に嗚咽した。
帰宅後もしばらく経っても、冷たい怒りの言葉は私の記憶に鮮明に残って消えなかった。
そして思い出すたびにジワジワと、私の恐怖を煽り続けている。。。
出来事から少し経った今だから分かるが、本当は相手にこう言いたかったのだと思う。
『ちゃんと仕事のやり方を聞かず勝手にやった挙句、親切に教えた私に逆ギレするとは、どうことじゃゴルァ!!
なめたマネするんじゃねぇ、貴様をかぼちゃプリンにしてやろうか!』
…とまあ、最後にふざけてみた部分もあるが、私は怒りを出すのも消化するのも苦手だ。
だからこうして、カタチだけでも文字にしてみた。
ここまで読んでくれた人がいたなら、ありがとう。
まだ他人の怒りも、自分の怒りも怖いけど、いつかちゃんと伝えられるようになったらいいなと思う。
10/25/2025, 12:50:50 PM