ㅤ植え込みや石の影を必死に見て回っていると、たまたまとおりがかった子が声をかけてくれた。
ㅤ土で汚れたヒヨコのキーホルダーは無事見つかり、雨はいつしか止んでいた。水たまりに映る空がキラキラ光る。
「この向こうには、違う世界があるらしいよ」
ㅤ私は隣をチラリと見て何気ないことのように呟いた。
「こちら側の世界に、子どもを迎えに来るんだって」
「なにそれ。テレビの見すぎじゃない?」
ㅤ明るい笑い声が返る。
「そんな話、図書室の本で見た気がするなあ」
ㅤタイトルなんだっけ、と考える横顔に、私は水たまりを指して驚いた顔を作った。
「あれ?ㅤでもいまなにか、動かなかった?」
ㅤ空の奥にさ。
「え、どこ?」
ㅤ素直で純な背中に手を添え、私は水たまりの中へと思い切り彼女を突き飛ばした。
『水たまりに映る空』
6/6/2025, 9:26:36 AM