"視線の先には"
ふと隣を見ると、ハーネスを着けたハナと戯れながら夕焼け空を眺める大我がいた。
穏やかな優しい微笑みを浮かべており、まるで母性が溢れているような、柔らかな雰囲気を纏っている。
夕焼け空と相まって、有名な絵画のような神秘さを感じた。
夕焼けの景色を受けた大きな目は橙色に瞬いて、とても美しい宝石のように輝いている。
「……」
しばらく見惚れていると、恥ずかしそうに目を細めながら、おずおずとこちらを向いた。
夕日に照らされているが、なんとなく頬が赤い。
「……なんだよ」
「いや、何でもない」
「そうかよ」
訝しげに顔を歪ませると、大我の腕の中に収まっているハナが、構って欲しそうにこちらに視線を向けながら「みゃあ」と鳴いた。近付いて頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を閉じて喉を鳴らしだした。
「綺麗だな」視線を上げて口に出す。
「そうだな」
視線を夕焼け空に向けて、同意の言葉を発した。
去年に引き続き、俺の『綺麗』は夕焼け空に向けていると勘違いして同意した。
いつか『綺麗』が自身に向けられている言葉だと気付く日が来るのだろうか。もし気付いたら、どんな反応をするのだろうか。
7/19/2024, 11:01:02 AM