《あなたは誰》
今日も仕事かぁ、頑張りたくないけど、頑張るか。
肌を刺すような寒さの中、スマホのアラームを止め、布団から出る。
俺は崎田ユズオ、33歳。
これでも一家の大黒柱だ。
階段を降り、下のダイニングに行くと妻のサヤが朝食を用意してくれていた。
今日はトーストに卵にサラダ、まぁいつもと変わらないな。
「おはよう」
「おはよう、あなた、冷める前に食べちゃってね」
俺はダイニングテーブルに座り、味わうでもなく手早くトーストを胃に入れていく。
「ごちそうさま」
「あなた、今日生ゴミの日だからゴミ出しお願いね」
「わかったよ」
洗面台で髭を剃りながら答える。
「いってきまーす」
「いってらっしゃい、気をつけて」
着替え終わり、準備を終えた俺は、すでに結ばれて玄関口に置いてあるゴミ袋を手に持ち、会社に行く道中にあるゴミ捨て場に向かった。
「おはようございます」
見知らぬ女性がこちらを見て挨拶をする。
「お、おはようございます」
え?だ、だれ??
俺はゴミを捨てながら、その女性の風貌をチラチラと見た。
ゴミを捨て終わった女性は、再度こちらを見て会釈して通りすぎる。
あぁ!もしかして隣の奥さん!?すっぴんで髪しばってるから全く分からなかった・・・。
女性はメイクで変わるなと思いながら、俺は会社へと急いだ。
***
会社に入ったところで、男性に声をかけられた。
「おはようございます」
え?だれ??
「お、おはようございます」
するとその男性がプッと吹き出した。
「崎田さん、何キョトンとした顔してるんですか、私ですよ、白川です。花粉症がひどいからしっかりガードできるマスクとゴーグルでガードしてるんです」
「あぁ、なんだ白川君か、花粉症大変だな」
普段メガネやマスクしてない奴がメガネとマスクつけてるだけで分からんもんだな・・・。
白川君と別れ、自分のデスクに向かっていると、すれ違った女性に声をかけられた。
「おはようございます」
え?だ?だれ?
「お、おはようございます」
無遠慮に女性の顔をジロジロと見る。
「やだー、崎田さん、私ですよ古田です。もうコロナ落ち着いてだいぶ経つし、思い切ってマスク外したんですよ」
えええぇええ?
古田さんってこんな年上だった!?
もっと若いかと思ってた、、
「そうだったんですね、もうコロナ落ち着いてだいぶ経ちますもんね」
無難に返事を返した俺はそのまま古田さんと別れ、デスクに座り仕事を始めた。
ふぅー、今日は誰か気づかない人によく会う日だな
***
仕事を終えた俺が帰宅するため電車に乗ろうとしていたところ、後ろから声をかけられた。
「崎田じゃね?」
振り向いた俺は声をかけてきた男の顔を確認する、俺と同い年くらいのイケメンだ。
だ、だれ??
崎田呼びということは地元の知り合いか・・・?
「俺だよ、滑川、高校の時よく遊んだだろ」
「滑川!?」
滑川といえば100キロはあろうかという巨体だったはず・・・。
こんなイケメンだったか??
「ビックリするよな、睡眠時無呼吸症候群になってさ、医者に首回りの脂肪が原因だから痩せろって言われてダイエットしたんだ」
「痩せたらこんなイケメンになるの!?」
「まぁ、元が良かったんだろうな」
ドヤ顔をする滑川と別れ、自宅へと戻る。
***
玄関ドアを開けて中に入る。
「ただいま」
「おかえりー」
奥のリビングから、女性がこちらに向かってやってくる。
え?だ??だれ???
妻だと思ったが、まったくの別人だった。
「えと、、どなたでしょうか?」
妻の知り合いか?
「やだ、あなた、サヤよ、いつも会ってるでしょ」
「サヤ!??顔違うけどっ!?」
驚きのあまり大声を出してしまった、しかしそれくらいビックリしたのだ。
「あぁ、実は安い美容外科でプチ整形してみたら、意外と顔が変わっちゃって・・・」
ええええええ!?
良くも悪くもなってないし、別人になってるんだけど、、ほんとにプチ整形!?
「可愛くなったでしょ?」
サヤが俺に向かって微笑む。
「・・・う、うん」
まぁ、前より悪くはなってないし、まぁいっか?
見た目より、性格や価値観や他にも大事なものあるしな?
考えこむ俺にサヤが声をかけてきた。
「ご飯にしましょ」
そういや腹減ってるわ。
「今日の飯なにー?」
とりあえず食べてから考えよ。
2/20/2025, 8:49:16 AM