1つだけ
田舎に行くと星が綺麗だ。と言うのは良く聞く話。
小さい頃に見た事があったけど、本当に綺麗だった。
都会の夜空とは大違いだ。都会は電気が沢山着いていて夜でも明るい。その分星は殆ど見えない。
毎日仕事をして明るすぎる町を歩きながら家に帰る。空を見上げても周りの明かりが邪魔をしてチカチカ光ってみえ、目が乾く。
こんなに光を見ているから目の視力も落ちて、メガネをつけなければいけない。
都会が悪い訳じゃない。だけどたまに嫌になるんだ。疲れるんだ。明るすぎる町が。
そんなある日の帰り道。いつもどうり明るい町を歩いていた。その時光る何かが通った。この明るすぎる町で"光"はそこらじゅうにあるが、この通った光は何か違った。眩しすぎる光ではなく、とても柔らかな光だ。その柔らかな光を見る。それは一匹の蛍だった。その蛍は弱っているのか相当低い位置で飛んでいた。スっと手で捕まえて、蛍を見た。
弱々しく光っている。あの田舎の星と同じくらい綺麗に見えた。乾いていた目が潤っていく感覚がした。心が満たされた。
しかしふっと光が消えてしまった。
つんつんしてみてもなんの反応もない。
この町にはない、たった1つだけの光が今消えてしまった。
人混みの中、沢山の人が俺を見ているにも関わらず、しゃがみこんで泣いていた。
4/3/2023, 1:09:39 PM