仮色

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【奇跡をもう一度】

朝起きると外で小鳥が鳴いている。
小鳥の囀りは、歌を歌っているなんてよく例えられたりするが、生まれてこの方ずっと田舎に住んでいるもんだから、もはや毎日流れて気にも止めなくなってしまった名曲みたいなものだった。

眠くてとろとろ下がってくる眼を擦りながらカーテンを開けると、朝特有の涼を纏った日が差し込む。多分、絵にしたら青色系の光なんだろう。
それでようやく脳みそが起きなければいけない時間だと気付いて、欠伸をひとつ。
ちょっとだけ窓を開けてみると、冷たい空気と一緒にペトリコールが部屋を濡らしていった。
ああ、昨日の夜は雨が降ったのかな、なんて思いながら朝の空気を吸い込むと、やっとぱっちり目元が開いたような気がした。

朝日に照らされて、宵の雨の残りがキラキラ輝く。
それほど明度が高くないそれが眩しくて目を細めた。


ああ、こんな日々の奇跡をまたもう一度味わえたら。
続いていくちょっとした幸福に埋もれる日々は、奇跡で溢れている。

10/2/2024, 3:11:48 PM