極度のあがり症の私は、先生に当てられて答えが分かっていても、答えられないでいた。
誰かに何かを言われても、首を縦か横に振るだけ。よくそれで、社会人が務まるねー、なんて唯一の友達にも言われている始末。
そんな私にも好きな人が出来た。
パン屋で働く彼は、いくつくらいだろう…ひとつずつ丁寧にパンの生地を手で丸めながら焼いていく姿が素敵だった。
見てるだけで良いって思っていたけど、もう少し近くで見たくてパン屋に通うようになって行った。
2週間が過ぎた頃、クロワッサンを買いにパン屋に行った。
「いらっしゃいませ。家、近いですか?よく来て下さるから」
「…」
クロワッサンをトレーに入れながら頷く私を見て彼は微笑んだ。
会計を済ませて早く帰ろう…
「300円のお釣りです。また来てくださいね」
「…」
彼は少し天井を見て、すぐに私の方を見て微笑みながら
「僕のパン、美味しいですか?」
「はい!!!」
「声でかっ。それだけ美味しいって思って頂いていると!ありがとうございます」
彼との会話で体がポカポカしてきたのと、驚きが沸点に到達して、思わず口が開いてしまった。
私…変われるかも?
また、ここに来ますね。
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【お題】貝殻
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9/5/2022, 8:24:54 PM