いぐあな

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300字小説

貴女の隣は

 私が仕えていた聖女に突然のスキャンダルがわき起こった。彼女の人気を危うんだ貴族のでっち上げ。彼女も私も負けまいと戦ったが、仕える巫女達の未来を人質にとられ、聖女は
「ありがとう。ごめんね」
と言い残し、最果ての神殿に行ってしまった。

 最果ての神殿の冬は早く長い。しかし、厳しい自然の中、寄り添い生きる人々を聖女として支えながら、私も慎ましく穏やかに過ごしていた。そんななか、深い雪をかき分けて、王都で私に仕えていた騎士が、この神殿に赴任してきた。
「王都でポカをして飛ばされてしまいました」
 一年前より随分と逞しくなった顔で、楽しげに笑う。
「ところで貴女の護衛騎士の座はまだ空いていらっしゃいますでしょうか?」

お題「ありがとう、ごめんね」

12/8/2023, 12:16:43 PM