わをん

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『半袖』

教室でうちわや下敷きやハンディファンを見かけることが増えてきた。クラスには強めな女子が多いのでスカートの中に風を送ろうとはためかせるのを意図せず見てしまうことも増えてくる。もうちょっと周りの目を考えてほしい。
週が明けると衣替えとなるのでもはや暑苦しいぐらいの学ランやブレザーともしばらくお別れとなる。クラスの気になる子はいつも制服をぴっちり着るタイプだったので夏服はどんなふうに着こなすのだろうと内心楽しみにしていた。
週が明けて朝からよく晴れた暑い日。学ランを着てないだけでこんなに快適なのかと感動しつつ教室に入ると長袖カッターシャツやサマーニットなど昨日まで見かけなかった服装ばかりだった。気になる子の装いは半袖カッターシャツにベスト。むきだしの腕がスカートをはためかせられるよりも見ては失礼なものに思えて直視できない。なのにそんなときに限ってあいさつされる。
「おはよう。今日は暑いね」
「お、おはよう。……半袖、似合ってるね」
「ありがと。ちょっと早いかなと思ったけど、けっこう快適だね」
うふふと笑うその笑顔もまぶしい。見たい、けど見たくないと葛藤を繰り返す内に響き渡るチャイムが始業を知らせるのだった。

5/29/2024, 3:41:38 AM