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草を刈ったあとの青臭いにおいを嗅ぐと、大量虐殺の爪痕だと感じる。刈られた対象がたまたま人間じゃなかっただけで、なんらかの命が失われた痕跡だ、と思う。
花束をひとにあげるというのは、植物への大量虐殺を、人生におけるフレーバー程度にしか思っていないということだ。つまり、それだけヒトを愛しているということ。
すべての命は等しく尊いものなんてうそぶきながら、ヒトだけを愛すること、それが人間ってやつで、現世の人間はすべてヒトを愛したヒトとその子孫しかいなということを思うと、うんざりする。まあ植物に肩入れしたところで何の益もないからね。ヒトを愛する人間になる方が便利なんだろうさ。
そう思いながら、花屋に並んだ植物の惨殺体たちに、密かに小さく手を降った。

2/9/2024, 2:28:31 PM