ロイチ

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「ねえ!今日世界終わるよ!」
4月1日、最初に会った君の一言め。

「おはよう」
「おはよう!どうする!?どこ行く?!何食べる!?」
「世界最後の日だから?」
「そーだよ!あ、それとも最後の日は静かにいつも通り過ごす派?」
「うーん、どうだろ。最後の日を経験したことないから」
「今!なう!」
早くしないと終わっちゃうよ、と手足を四方にバタバタ動かす君が可愛くて、面白くて。
それじゃあコンビニでおやつでも買って、小さい頃近所の子たちと遊んだ秘密基地に行ってみようよと提案すると、
「あえての安っぽさにノスタルジーをレイヤード……!出来る子!」
なんだか褒められた。

それから、「あの世にお金は持ってけないよ!」なんて乗せられるがまま散財をして、古い池のほとりに作った秘密基地の跡を訪ねた。
もうすっかり風雨に晒されて風化しているけれど、板やら棒やらシートやらはあまり散らばらずに残っていて。僕らが来なくなった後も大人に見つからなかったのか、見つけた上で見て見ぬふりした誰かがいたのか。
コンビニにで買ったブルーシートを広げて、薄暗いよう不自然に明るいような水面を見つめながらお昼ご飯にした。

「やぁ、午前中はなかなか満喫したね。午後はどうしよっか。家帰る?それとも自転車で行ける所まで行ってみる?」
「いやいや、明後日から新学期でしょ。どうせやり残した宿題見てくれって言い出せなくて変なうそついたの、分かってるから。ほら、もう12時回った」
時計の針は12時1分を指している。
「エイプリルフールの嘘は午後に種明かしをするのがルールだよ。さ、帰って宿題しよ」
「…………。びっくりしたなあ、君は思っていた以上にリアリストだったみたいだ」
「そりゃ君よりはね」
「ねえ君、確かに宿題はひとつも終えていないし、エイプリルフールの嘘は午後に正体を表すべきなんだろうけど。それって今日の出来事にひとつも関係無いんだよ」
「……え?」

その時、遠くからやたら腑抜けて陽気なメロディが町内放送から流れた。
正午を告げる放送だ。

「あ、時計進んでたみたい」
「そうみたいだね」

#エイプリルフール

4/2/2023, 9:51:00 AM