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何気ないふり(オリジナル)

私、40代女。隠れオタクである。
職場に、それと一見わからないグッズを飾り、ひとりニマニマするのが日課である。
本日、職場のご年配のおじ様が持つ鞄に目が釘付けになった。
その鞄は、先日発売になった、90年代マイナーロボットアニメの復刻グッズであった。
その鞄、表にキャラ絵もなければアニメ名の記載もない。作中に出てくる鞄のデザインを再現しつつ、その世界の世界地図と紋章をさりげなく刻印してあるオシャレ革鞄で、私の大好きな、わかる人にしかわからないグッズであった。
ちなみにこの鞄、結構高かったので、私は推しキャラの紋章キーホルダーとシールしか買っていない。
(え?嘘、あの人もオタクなのかしら)
彼とは知り合い程度で、深く話をした事はない。
この職場にアニオタがいると聞いた事もない。
もっとも、私も隠しているので、実はいるのかもしれないが。
彼と作品の話がしたくてソワソワしたが、話しかける直前に思いとどまった。
(いや、待てよ。あの歳でアニオタとかあるか?誰かからプレゼントされて知らずに使ってるとか、あるかも?ここで作品名でも言おうものなら私がオタバレするのでは?)
私は慎重に、何気ないふりを装って声をかけた。
「あ、佐藤さん、鞄変えたんですねー。格好良い!それ、どこで買ったんですか?」
我ながら白々しい。
彼は顔をあげて私を見て、にこりと笑った。
「ありがとう。孫がネットで買ってくれてね」
(あっっぶねぇ!!お孫さんだったーー!!)
私は冷や汗をかいた。
(っっかぁーっ!!90年代アニメなのに若い子が知ってるとか、渋い趣味してんなぁ!!お孫さんとお友達になりてぇーー!!)
私は内心叫び散らかしていたが、表では平然を装った。
「お孫さん、良い趣味してますね」
ブランド品でない事は知っているので、その辺りは避けて言う。すると、彼は少し戸惑ったように、
「あ、いや、これは僕が欲しくて孫にネットで買ってもらったんだ」
と言った。
(え?)
私は目が点になった。
しかし、ぬか喜びはまだ出来ぬ。彼がアニメグッズと知らずにネット検索してデザインだけで選んだ可能性も少しはある。
(ある、か?)
私の葛藤を知ってか知らずか、彼は首を傾げ、
「永野さんはこれ、知ってると思ったんだけど」
と、爆弾発言をかましてくれた。
「え、な、なんで」
「君の机に置いてあるアレコレ、アニメやゲームのグッズでしょう。結構マニアだよね。このアニメも知ってるんじゃないかと思ってたんだけど?」
「…知ってます…大好きです」
私は観念して、彼と固い握手を交わしたのであった。

3/30/2026, 12:55:37 PM