暗かった街がしらじらと浮かびあがっていく。
川面がきらめき、背の高いビルがシルエットを際立たせ、光が満ちていく。
夜に冷えた街全体が、次第に温まっていく。
鳥のさえずり、車のエンジン、トースターのタイマー。
静かだった街に、朝の音が増えていく。
この家の〝朝の音〟はなんだろう。
窓の外をぼんやり見ながら考える。
「××××××、起きたか」
ノックの音。自分の部屋でもあるのだからノックなどせず開けていいのに。
「起きた」
答えて立ち上がる。
細く開いたドアの隙間から、コーヒーの匂いが漂ってくる。
半分ほど開いたドアから不機嫌そうな顔が覗く。
でもこれが、彼のいつもの顔だ。
「おはよう」
言いながら、さっきのノックの音と声がこの家の〝朝の音〟だと思った。
END
「夜が明けた。」
4/28/2025, 11:22:10 PM