おきつねちゃん

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テーマ「勿忘草」

いま思えば、あの時もっと自分がちゃんと気持ちを伝えていれば何かしらは変わっていたんじゃないかと思うときがある。

それは社会に出てからもそうで、あまり連絡を取り合わなくなった友人や、会社の仕事関係。様々なところでそう考えるときがある。

それは恋愛だって例外じゃない。

出会いがあれば、別れもあるのは必然的で、当時の自分は我儘で身勝手だったと何度後悔したことだろう。

「あのね…あんまり連絡も取れないんじゃ、付き合ってる意味ないなって思って」

涙を堪えていること、分かっていた。
自分のせいでそんな事を言わせてることにも気付いていた。

「別れたい」

彼女はいつも俺を一番に考えてくれて、好きだと素直な思いを伝えてくれていた。それなのに俺ときたら友達を優先し、彼女のことを疎かにしてしまった。好きなのに、大事なのに、俺は勝手に彼女が離れていかないと思い込んでしまった結果がこんな結末を迎えてしまった。

「…分かった」

ごめん。やり直したい。俺はまだキミの事が好きなんだ。
こんな言葉が喉から出かかっているのにそれを伝えることは出来ず、頷いた俺を見て彼女は涙を一粒零すと小さく笑った。

「あ、見て見て。この花、小さな花なのに可愛いよね」
「そうか?そんなの何処にでも生えてんじゃん?」
「なんか私今花言葉にハマってるんだけどさ、真実の愛とかっていう花言葉らしいんだけどもう一つあって」
「ふぅん?」

にこにこ話す彼女の顔は今でも思い出せる。でも声がどんな風だったのか思い出せない。それが非常に悔しい。

「わたしを忘れないでって意味もあるんだって」

一切興味のなかった花言葉。キミは何気なく言った言葉なんだろうけどさ、数年経って春の季節が訪れると毎年咲くこの花を見れば、必ずキミのことを思い出すよ。

でもキミは、そんな俺のこと忘れてもう新しい道を歩んでいるんだろうな。

2/2/2024, 10:52:29 AM