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#1000年先も

―――

見える景色が反転している。
知らせるように差す朝日が、妙に暑い。

相変わらずの寝相に、自分の事ながら呆れた
嗚呼、体が痛い。

腹に力をいれ起き上がり、体をグッと伸ばす
枕元の小窓を開ければ、待ちわびたと言わんげな風が、部屋へと広がった

すると、唸り声と共に布の擦れる音が一つ

音の方へ視線を向けると、見慣れた癖毛が、布団から覗いていた。
...きっとこの布を剥いでしまえば、だらしのない寝顔が露になるのだろう
そう考えただけで、なんだかおかしかった。

ただ、今日は折角の休日な訳で。
自他ともに認める早起きの俺は、起こさないように布団から外へ出た。

「...さみぃ...」

逆戻りを考えたが、ルーティンが崩れては仕事の時に響くと無理やり足をキッチンへ向かった。


・・・・


「...はよ...」

湯気の立つ珈琲カップを片手に。
結局は元いた場所へ戻ると、彼奴が起きていた。

...気怠げな声や、半分目が閉じていたりと。
まだ半分夢の中らしいが。

俺がベットの縁に座れば、のっそりと効果音の着きそうな様子でこちらへ近付き、肩に寄りかかってきた

珈琲はこぼれる事はないが、力を入れていないのか何時もより重く感じる

数度の声掛けをしたが、生返事ばかりな為諦めた。

口元でカップを傾け、身体に広がる熱さと苦味を感じつつ、此奴の顔を覗く

やはり顔だけは整っているな、なんて。
普段の粗暴な言葉遣いと、少し前に似たような事を言われた事を思い出しながら思った。


こんな事になるなんて思ってはいたかった。
昔から、馬鹿の一つ覚えの様な喧嘩を繰り返してきた間柄で。
あの頃の自分に伝えたなら、白目を向いて倒れるのでは。こいつの頭を撫でながら、そんな事を思う。

前までは無くても一日が淡々と過ぎた。
しかし今じゃ、こいつの寝顔のない朝が考えられないのだから不思議なものである。

...もう少ししたら、不思議と思うことすら無くなるのだろうか。
考えられなくなった、今みたいに。

......そうなら良い。
此奴の寝顔を拝んで、一日を始める
そんな日々がずっと続けばと、俺はもう一度珈琲カップを傾けた

2/3/2026, 12:37:16 PM