作品6 はなればなれ
「離れ離れになってもいつか必ず会いに行く」
親友が泣きながら、そう言っていた。
そんな懐かしい夢を見た。といっても、中学校卒業式の日だから、言うて半年くらい前。
親友とは気が合って、いつも一緒だったから、当然高校も同じだと勝手に思っていた。結果からいうと、違うどころか、お互い地元から遠く離れた高校に行くことになった。泣きながら、いつか会う約束をしたのを覚えてる。
ムクリと起き上がり、時刻を確認する。八時少し前。今日はこれから、ちょうど夢で見た親友と、会う予定だ。
顔を洗い、歯を磨いてから、朝食のパンをモソモソと食べる。高校から一人ぐらしはちょっときついな。特に、土日ご飯でないのが。
メールアプリを開き、親友にメールする。
『今起きた。ご飯食べてる』
すぐ、既読がついた。
『遅うございます。遅刻するなよ?』
『多分だいじょぶ。十一時に〇〇駅集合だろ?』
『“((・-・*)コクリ』
『んじゃ、間に合うわ』
『遅れても適当にそこら辺で時間潰すから安心しなされ』
『うわぁいっけめーん』
『いいからさっさと飯を食う』
あいよと返して、3枚目のパンを食べ終わる。テレビをつけると、ちょうど9時になっていた。
服は昨日の夜選んだし、持ち物は服同様、昨晩に完璧に準備したから、あとは身支度だけか。楽しみすぎる。
なんかデートみたいだなと、少しニヤつく。
あーあ。早く会いたいなー。
どうせあいつのことだからパンでも食ってんだろうな。ちゃんと栄養摂ってんのか?と送りかけて、おかんかよと思いやめる。
あいつと最後に会ったのはいつだっけ?確か卒業式だから、半年ちょっと前か。久々だな。
そんなことを考えながら、ゆっくり服を選んでいると、もう十時になっていた。今から駅まで歩いて行けば、電車降りて〇〇駅つくときにはちょうどだろう。
母に行ってきまーすと声をかけ、中学の頃から気に入ってる靴を履き、玄関の扉を開けた。
「おーす、久しぶり!」
突然後ろから声をかけられ、バッと振り返る。立っていたのは、懐かしの親友だった。
「何だ、お前かよ。久しぶり」
「ちゃんと時間通り来れたな。偉い偉い」
髪をワシャワシャとされる。犬じゃねーよと返すと、親友は中学の頃から変わらない笑い声で、ふははと、わらった。
「とりあえず腹減ったし、飯行こ」
「賛成。今朝パンしか食べてないんだよなー」
「やっぱり?」
「やっぱりってなんだよ」
おかんかよ。
歩きながら互いの学校について話し合う。
「担任がまじ当たりでさ、しょっちゅう席替えしてくれるんだよね」
「いいなうらやまし。こっちはテスト終わってからじゃないとしてくれないよ」
「かわいそうに」
「思ってないだろ」
「てか、部活なにやってんの?」
「フッフッフッ、当ててみよ」
こいつのクイズで当たったことないんだよな。
それなりに熟考してから答えてみる。
「……帰宅部?」
「ざんねーんちがいますー」
「は、うっざ。なんだよ答えいってみろよ」
「アニメ研究同好会( -`ω-)✧ドヤッ」
「会話でもドヤった絵文字使ってんのが分かるわ。」
「そういう君は?」
「軽音。ベースやってる。指めっちゃ痛い」
ほれ見てみと左手を出すと、うわーいたそーと、あいつはうめいた。
昼食はハンバーガーにしてもらった。流石に朝食パンだけはきついなと思いながら、ハンバーガーにかじりつく。ちらりと、自分の知ってる手ではなくなった親友を見る。
自分が知ってる親友は、音楽そんな好きじゃなかったんだけどな。
昼食はあいつの要望でハンバーガーにした。中学の頃のように、大きな口で食べるそいつを見ながら、こういうところも変わんねーなと思いつつ、別のことを考える。
自分が知ってるこいつは、アニメそんなに好きじゃなかったんだけどな。
もう、あの頃みたいには、戻れないんだな。
ご馳走様でしたと手を合わせ、店を出る。
その後は、中学の頃みたいに、ゲーセンに行ったり、本屋に行ったり、駄菓子屋で買ったお菓子を公園で食べたり、ふざけ合ったり、過去の出来事を、自分たちなりに沢山なぞった。
そしてまた、別れの時間が来る。
バイバイと言い合い、また会おうねと約束する。沈黙が続くとき、自分は、知らないかつての友人を、もう見たくない。そう思った。
電車が来る。
彼が乗った瞬間、自分自身に宣言するように、大きな声で叫ぶ。彼もこちらを振り向いていた。
「「絶対、次も会おうね!知らないのはもう嫌だ!」」
まさかの二人、同時に全く同じことを言い合ったのに気づいて、思わず吹き出す。
離れ離れになってても、やっぱり似てるな。だからこそ、親友なんだ。
ドアが閉まる直前、約束と、呟いた。
ドアが閉まった後、かすかに微笑んで、大きく頷いた。
離れ離れなんて関係ない。
⸺⸺⸺
作品3 また会いましょうの「俺」がでてきます。
いわゆる過去編ってやつです。
11/16/2024, 1:32:55 PM