とよち

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こんな夢を見た、私はウッドチェック刑務所の4棟に収容されたウィルソン・サンキスという28歳の男の身内で、何があったか知らないがそいつが作業中に謝って転落し死んだらしく、「ご親族のかたに死体を引き取って欲しい」と頼まれてきた。私はそいつの身内だった覚えは無いし、自分が今から迎えにいくやつが誰かさえ全く分からなかったが、夢の中では怖いほどなにも考えずすんなりと受け止めた。私は車を三十分ほど走らせ、町から離れた高原に見える黒いか溜まりのようにそびえ立つ刑務所まで向かった。車内のラヂオではサムクックの「ワンダフルワールド」が流れていた。私は車を止め、死人の待つ部屋へ続く裏口まで向かった。外では看守が二人私を待っていて、何を言われたが覚えていないがお悔やみの言葉をもらったと思う。そのまま中に通されシーツが被された死体がポツンとおいてある部屋に入った。その横棚がありその男についての粗末な薄い書類が置かれていた。上に「鑑識結果」と大きく印刷されており、死因の欄には「転落死」と小さな文字で記されている。二枚目のファイル見ると薄い紙束にその男の28年間の記録が残されていた。

ウィルソン・サンキス 1962年4月28日22時12分誕生
1990年4月3日13時45分死没
職業 レンガ職人
罪名 殺人罪
引ったくりに会い取り返すために逃げる犯人にレンガを投げつけたところ頭部に直撃させ死亡させた。その後、近くの沼に遺体を投げ捨て逃走を図った。裁判官はこれを正当防衛と認め減刑。殺人罪と死体遺棄の罪状で1年と3ヶ月の実刑判決をいいわたした。
サンキス家に誕生し、母が12歳のときに交通事故で死去。その後家計の為中学卒業後から就職を希望するがなかなか見つからず親戚の職人のところでレンガ職人として働く。1989年8月26日殺人罪と死体遺棄の容疑で逮捕。1990年4月3日13時45分死没。

それだけだった。このあわれな男の生涯は3ページで終了だった。私は被せてあるシーツをめくりその男と対面した。きれいなまだ死んでいないような真っ白な死体だった。私は刑務所の裏口から飛び出し空を葵で泣いた。歯を食い縛り胸ポケットに手を突っ込むと、煙草が出てきた。私はそれを1本口に加え、大きく吸い込んだ。

1/24/2024, 9:28:51 AM