現役生のときに受験で全落ちした僕は、一年間浪人しても再び全落ちした。
予備校に通い詰め、模試でも納得のいく結果を出していたのに、本番になると調子がおかしくなってしまったからだ。
不安はなかったし、緊張もしていなかった。むしろワクワクしていた。
だというのに、この有様だった。
昨年に引き続いて絶望を味わった僕は、親に対してどんな顔をすればいいのか、てんで見当がつかなかった。
今後の生き方にも思い悩むから、なおさら辛い。
浪人すればするだけ、同い年の人たちからは出遅れる。難関校や超難関校、医学部を志望しているのなら理解できるけれど、僕の場合はそういうわけでもないから、諦めて就職することも視野に入れないといけない。
しかし僕は、紙面の勉強としか向き合ってこなかったため、職業のことをほとんど知らなかった。どういう試験を受けて、どういう訓練を積まなければならないのか。職種によって異なるのだろうけれど、そういった方向に暗いのである。
自室の布団の中で打ちひしがれていると、友人から連絡があった。
『結果、どうだった?』
嘘を吐いても虚しくなるだけなので、『全落ちしたよ』と正直な内容を打ち込む。
既読の文字が下に表示されても、彼が返信してくる気配はなかった。
何を言えばいいのか、考えているのだろうか。
違う、と思った。きっと彼は、下手に同情して僕を傷つけないために、あえて何も言わない。
既読無視されるだけ、マシだった。
両親にも結果を報告し、家族会議を重ねた結果、僕は自衛隊学校に行くことになった。学ぶとともに、お金を貰えるからだ。
そのことを彼にも伝えた。彼からの返信は、たったのひと言だった。
『頑張れよ』
同情をくれない彼のその言葉は、優しさに溢れていた。
この人と友達でいられることを、僕は誇りに思う。
2/20/2024, 10:49:19 PM