『君と最後に会った日』
丁度梅雨時で、蒸し暑い日が続いているとき。
「別れたい」
彼女の震える声が聞こえた。
「…え、なんて?」
それを否定するようにもう一度言葉を貰おうとした。それが、良くなかったのかもしれない。
「いっつもそうだよね、私が何か話してても何?何?って……ああ、話聞いてないんだって、おもって…」
彼女の瞳から、次々と溢れ出す涙は、頬を伝って地面に落ちる。
「すきだったの、私だけだったよね…」
そんなことない、そう声をかけなければいけないのに、言葉が出ない。俺が黙る時間が長ければ長いほど、彼女は更に涙を流す。それを見ているのが辛くて
「わかった。別れよう」
泣いていたはずの彼女の口角が徐々に上がっていく。泣いているはずなのに笑っていて、どういうことなのか、脳が追いつかない。
暫く笑っている彼女を見ていたが、ふと、彼女の笑い声が止んだ。
「いままでありがとう」
そう言いながら笑う彼女は、今までに見た事無いくらいの、美しい笑顔だった。
6/26/2024, 1:50:08 PM