『時計の針は進んでいく』
カチッカチッと一定のリズムで音を立てながら時計の針はどんどん進んでいく。一秒また一秒と時間が過ぎていくにつれてだんだんと焦る気持ちが湧いてくる。制限時間は残り十分。だと言うのに俺のテストの解答用紙は白紙が目立つ。なぜなら俺はこれまでの五十分近くは夢の中にいたからだ。
遡ること昨日。俺はそれまでテスト勉強を一切やらなかった。テストがあるということは分かっていたがどうにもやる気が起きなかったのだ。そのせいでテスト前日をノー勉で迎えてしまう。俺はもちろんそろそろやらないとだめかなと思い勉強を始めた。それが午後8時のことだ。俺はテスト範囲の教科書を開き内容を見た。そして俺はその内容に驚愕した。
あーこれは確かに授業でやったなという感想は出てきたものの内容については全くもって身に覚えがないのである。
「これがエビングハウスの忘却曲線か…」
と呟きながら俺は教科書の例題を解き進めた。
例題は簡単なのですぐ終わると、俺は一息つき、時計をみる。いつの間にか一時間経っていたようだ。「とりあえず他の科目もやらねば」ととにかく教科書を開きまくり、どういう内容だったか思い出そうとする。
十科目分見終わり、時計をみると時間はもうすでに十一時だった。時間が足りなすぎる。いつもだったら寝る時間だがここで寝たら明日なにもできないと冷静な判断を下し、俺は夜ふかしして勉強しようと決めた。
俺は満足するまで勉強を続けた。とりあえず明日テストがある教科のテキストはやろうととき進めていく、そして一通りやったと思ったときにはもう時間は朝の4時。時間よ止まれなんてしょうもないことを考えながら俺は眠りについた。
そして今に戻る。なぜ俺がテスト中に寝てしまったのかはこれまでの話を聞けば明らかだろう。寝不足である。そして寝不足で頭が回らずに一問目から分からんとなり気持ちよく眠ってしまったのである。
気合を入れて今からでも解こうと思い一問目から再度取り組もうとしたができなかった。そんな数十分寝ただけでは俺の頭は覚醒しなかった。
そしてそんな絶望的な状況の俺にできることはただひとつ。当てずっぽうで問題の解答を書くということだ。俺はとりあえず解答用紙を埋めていった。問題の内容なんか一問も読まずにどういう解答方法なのかだけをみてどんどん埋めていく。
そんなことをして解答用紙を埋めると時間は残り一分をきっていた。秒針がどんどんと12に近付いていく。俺は時計の針よ止まってくれと有りえないことを祈りながら時計を眺めていた。
キーンコーンカーンコーンというチャイムがなり、俺は解答用紙を提出した。白紙ではないがデタラメばかりの解答用紙はほぼ白紙と同じであろう。
俺はその時初めて赤点を確信した。
時計の針は進んでいく。また次のテストが始まるまでのカウントダウンが始まった。俺は時計の針が一週間に戻ってくれればいいのにと妄想しながら席につく。
次のテストでは寝ないようにしなきゃと思いながら俺はテスト用紙を受け取った。
2/6/2024, 10:02:17 PM