自宅を出て徒歩5分。勤務先への道すがらに小さな公園がある。
ブランコ、タイヤ、ジャングルジム、動物を模したよくわからない乗り物。それと、小さめの砂場。こうして遊具を挙げてみると、小さいなりに意外とあるものだな、という感想が浮かんだ。
小学校に上がるか上がらないか、という年の頃は、ここでよく遊んでいた。記憶も朧気だけれども、それでもうっすらと覚えているものもある。たとえば、高い所が好きで、ジャングルジムのてっぺんに登って仁王立ちなんかしてみたりして、近くにいた大人たちをヤキモキさせたこととか。我ながらヤンチャだったと苦笑せざるを得ない。
ふと、仕事終わりに何となく気が向いて、コンビニでアイスを買ってから件の公園に足を向けた。アイスを口内で溶かしながら向いた先にはジャングルジム。そしてああそういえば、と思い出したのだ。あそこから眺める景色は、それはもう、煌めいていたものだ。
大人になった今、改めて見てみると、思ったよりも高さはない。己の身長より、僅かばかり高いかな、という程度。当たり前の話だ。あの時と今では、倍ほども違う背丈なのだから。
背丈が伸びて、見える世界が変わった。より多くのものが見えるようになった。そのはずだ。けれど、何故か。今見る世界のほうが狭苦しく感じてしまうのはどうしたことか。
このジャングルジムに登ってみれば、また世界の広さを感じることができるだろうか。食べ終わってしまったアイスの棒を意味もなく噛りながら、思考する。そしてすぐに考えることをやめた。常識に雁字搦めな、在り来りな大人になってしまった自分には実行できそうにない仮想だからだ。
出来もしないことを考えたって仕方ない。ゴミ箱にアイス棒を投げ入れて、帰路につく。
ジャングルジムには、もう登れない。
テーマ「ジャングルジム」
9/24/2024, 4:21:43 AM