スキー合宿の最終日、事件は起こった。
クラスの中の一班が雪山で遭難したのだ。
外は飄々と雪が降りとても捜索できる状態にない。先生を含めたメンバーは騒然となり最悪の事態を想像した。
「なんでお前は余裕そうなんだよ。彼女もその中にいるんだろ、助けに行かなくていいのかよ!」
ぼくはその中でどこか冷静だった。まるで見えない第三者の視点で物事を俯瞰しているような不思議な感覚。
心配していない訳が無い。
でも彼女なら、と思考パターンはありありと想像出来る。
「あいつ、昔から方向音痴だからな」
冗談を言い合うように。地図と睨めっこしていたぼくはトンと一点を指さして先生に伝えた。
「あいつなら、きっと───」
遭難してしまった。班員の一人が足を怪我して、その治療をする為に近くの休憩所を探して道に迷ったのもいけなかった。おかげで吹雪に見舞われ、帰るのも困難になってしまった。
「私達、きっと帰れないよ……っ」
「ううん、大丈夫。きっと助けは来る」
私は確たる自信をもってそう答えた。決して不安を解消したかったからでは無い、心の中の冷静な私が想像したのだ。
頼りになる彼が、絶対に来てくれる。
私を分かってくれる。
「あいつなら、きっと───」
結局彼女達はすんなりと、言った場所で見つかった。皆はこれを愛のなせる技だとか囃し立てていたけれど、多分違う。
これは愛じゃなくて、お互いの信頼。
絆のおかげだ。
3/7/2023, 6:13:31 AM