「ね、綺麗でしょう?」
彼女は僕のほうを見てそう尋ねた
暗い闇の中、ピカピカとネオンが光る
「私のお気に入りの場所なの。」
「…そう、なんだ。」
口づまってしまったのはきっと、夜景が眩しすぎたせい
ピロッピロピロっキュイーーーンピピッ
店内に響く音がうるさい
それもそうだ、なんせここはパチンコ店なのだから
彼女と夜景を見たあの日から、もう、3年もの月日が流れようとしていた
別にその間に彼女は死んでしまった…なんてドラマのような話はない
ただ別れた。それだけである
理由は僕の浮気
もちろん、そんな事実は無いのだが、あのとき僕達はすれ違っていたのだ。とても、すごく、盛大に
故に、小さなことでもすぐ喧嘩して、お互いにイライラ
を募らせていた
そして一気に爆発したらしい
彼女はいなくなった
仕事が終わり、外へ出る
街は今日もピカピカと輝いていた
その輝きが目に染みる
鼻の奥がツン、と痛くなった
浮気は一切、していない
けれど彼女を不安にしてしまったのは僕のせい
(君にあのとき、伝えればよかった。
綺麗だって、君がとても綺麗だって、伝えていればよか った。)
そうすれば、こんな後悔に襲われることもなかったはずなのに
自分が口下手だって分かってて、「もしかしたら怒らせてしまうかもしれない」、なんて思ってて、だから何も言えなくて
それでも、そんなんでも僕は自分が愛を伝えてるって思ってた
本当はそんなこと無いのに
「あぁ、綺麗だなぁ。」
今、どこに居るのかさえわからない君に向けて言葉を紡ぐ
愛してるよ
そして涙が溢れたのは、きっとネオンが眩しすぎたせい
9/19/2024, 8:26:47 AM