「太陽に手を伸ばす」
「君のお母さんは、いつも君を見守っている」
俺の生い立ちを知った人は、大抵そう言う。
その言葉に反発したこともあった。
だが、今はもう、その言葉に同意するフリが出来るようになっている。
余計なことを言って、面倒なことになるのは避けたいし、言う側には悪気はないだろうから。
心のどこかで思っていたことを、やっと認めることが出来たのは、母の足跡を辿るようになってからだ。
真っ青な空。
太陽に向かって真っ直ぐに伸びる向日葵がどこまでもつづく。
あと数ヶ月すれば、ここは雪に埋もれる。
母の生まれ育った町に、節目節目で訪れるのは、墓参りするよりも母を身近に感じられるからかもしれない。
もしも、見守ってくれているとしたら、俺のこの選択を応援してくれるだろうか。
青空に手を伸ばす。
太陽の熱を、体中に、心の奥底まで、取り込むように。
────心の灯火
9/2/2024, 2:46:35 PM