針間碧

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 二十一歳。それは私がファッションに関する自我を得始めた時の年齢。基本出不精だった私は、適当なTシャツにジーパンを履いておけば問題ない、そんな人間だった。私が服に興味を持ち始めたのは、旅行で東京に行った時だった。ゴスロリのようなふわふわな服からロックな服まで、漫画の中でしか見たことのないような服を当たり前に着ている人たちを見て、なんとなく「それでいいんだ」と感じた。
 そこからは早かった。手当たり次第にいいな、と思った服を買いあさり、自宅で服の着合わせを考えるので一日を費やし、いつの間にか自分が着た服を見てもらうために外出するようになった。私の住む地域は都会と比べるととがった服を着ている人は少なかったが、特に気にすることもなかった。どんな種類であれ私の服に向けられる視線が心地よかった。特別露出するような服は好んで着ていなかったため、下賤な視線は向けられていなかったのもあるのかもしれない。
 さて、ここで一つ問題が発生した。そう、衣替えである。今まで私はTシャツにジーパンといった風貌で枚数もそこまで持っていなかったため、衣替えなんてものはしたことがなかった。勿論タンスは一つで十分事足りていた。
 今でこそ多いのは夏服だけだから元々持っていたタンスだけで問題なかったが、冬服を揃えていくとなるとそうもいかない。圧倒的に収納が足りない。クローゼットはあるにせよ、そこにそのまま服を入れるわけにもいかない。収納は必要だ。私は収納を探して、大きめのショッピングモールへ向かった。
 休日ということもあり、ショッピングモールはかなりの人が訪れていた。私は意気揚々と家具量販店へ向かおう…として、道中にあるショップに目が吸い寄せられた。
 そこには、夏服とは違う、布の多さを圧倒的に主張した冬服が所狭しと並んでいた。それも、私の好みのタイプの服ばかり。このショップはゆるふわ系の洋服を主に取り揃えているショップで、夏服を探しに来たときはそこまで惹かれることはなかった。しかし、冬服を置いている今は違う。寧ろ好みのものばかりだった。何故だろうと考えて、彩色が原因であることに気づいた。きっと私はゆるふわ系でも、落ち着いた色のものは好きなのだろう。ショップ内を散々見回り、新作らしき冬服を十五着ほど購入した。私は浮かれるまま自宅に帰った。
 帰って購入した服を並べて満足した後、私は重要なことに気が付いた。
「あ、収納ない」

10/22/2024, 12:08:25 PM