君と手を繋いで歩く外は寒いのに、繋いだ手だけは暖かくて、ゆるく、ゆるく手のひらに力を入れた。
風は冷たくて凍えそうで、雨はじっとりと肌を伝う。僕と君以外は誰もいなくて、まるで世界に二人で取り残されたみたい。
ここに桜の花が咲く頃、僕と君はもういない。
冷めた視線と刺すような世間が僕らを殺した。無遠慮な悪口(あっこう)と無責任な噂が飛び交い、好奇の目に晒された僕らの心にもう擦り減るものはなくなってしまった。
一寸先も見えない真冬の海。さざ波の音だけが耳に聞こえて、僕らを手招いて呼ぶ。
―――…海の下にも都は…。
【手を繋いで】
12/10/2023, 6:36:35 AM