猫は自分が快適に過ごすことが出来る場所を探すのが得意である。
夏は涼しい場所へ、冬は暖かい場所へ。
常に探求を怠らない。
自分が快適に過ごすためだが、それ以上に重要な理由がある。
猫は体温調節が苦手なのだ。
特に寒さには敏感で、暖かい場所を探すことは死活問題でもある。
自分の体温を最適に保つために、今日も最高の場所を探す。
しかし快適な場所というのは、季節や時間、日の当たり具合や風向など、様々な要因で変化する……
先ほどまでは快適だった場所も、すぐに凍えてしまうことがある。
そういった意味で、家に飼われている猫は幸運である。
人間が快適に過ごすための道具は、全てでないにしても猫にとっては有用だ。
コタツは童謡でも歌われているように丸くなるし、エアコンは言わずもがな。
だが一点、家で飼われている場合特有の問題がある。
その問題を説明するために、実際のケースを説明するとしよう
これは、とある家で飼われているタマの話である。
◇
タマは窓辺で日向ぼっこをしていた。
冬にもかかわらず、部屋の中は春のように暖かい。
至福の中でうたた寝している時、彼の主人が帰って来る。
「タマァァァ、タダイマァァァ!」
……奇声を上げながら。
猫は大きな声が苦手だ。
彼は条件反射的に飛び起きて逃げ出そうとする。
しかし寝起きのために反応が遅れ、すぐに捕まり抱きかかえられる。
「カワイイィ、アタタカイィ」
彼の主人は長い間外にいたのか、手は冷たくタマの体から熱を奪っていく。
タマは不快になり、もがいて脱出しようとするも、彼の主人は手放さない。
「暴れちゃだめだよう」
そう言いながら、彼の主人は座る。
タマをがっちり捉えながら……
◇
こうして時折、人間に至福の時間を邪魔されるのが、家で飼われる猫の問題である。
猫によっては非常にストレスフルな出来事だが、悪い事ばかりでもない。
人間は気の済むまで猫を抱いた後、膝に乗せるのだ。
この膝の上というのが、意外と穴場である。
暖かく、寝心地がいい。
信頼している存在の匂いに包まれるのもポイントが高い
なにより一番いいのは、一度奇声を上げた人間はしばらくは奇声を上げないということ。
この場所にあって、初めて心の底から安心して寝ることが出来るのだ。
『冬は一緒に人間といること』
それが、猫にとって快適に過ごす秘訣である。
12/19/2024, 1:41:53 PM