なんの気なしにふと見たら、ちょうど時計の針が重なっていた
12のところに、時針分針秒針がある
奇妙なことに、3つの針はいつまで経っても動かない
電池が切れた?
いや、そんなタイミングよく電池切れになるなんてあるか?
不思議に思いながら時計を見つめていると、ハエが空中で静止しているのが目についた
時が、止まってる
そう直感した瞬間、凄まじい勢いで時計の針が巻き戻り始め、俺はいつの間にか意識を失っていた
目を覚ますと、近所の公園だった
夕方の
俺は自宅にいたはずだけど
混乱する中でただ、なんとなく状況を判断するヒントはあった
公園の外
今は一軒家が複数建っているはずの場所に、昔あった駐車場が広がっている
なるほど
俺は過去に連れて来られたみたいだ
なんでそんなことになったのか、わからないけど
0時0分0秒に時計を見たから?
とにかく、ここにいてもしかたないよな
まずは今がいつか、知っておきたい
……いや、その必要はなくなった
今は10年前の9月だ
公園で、俺だった子供が泣いてる
そう、当時その子供は俺だった
珍しい病気で、見た目は健康そのものなのに、余命幾ばくもなくて
だから俺は絶望して泣いてたんだ
そうか、わかったよ
俺が俺を助ければいいんだろ?
俺は過去の俺に、助かる方法が存在すると告げ、わらにもすがる思いの過去の俺を連れてある場所に来た
公園から歩いて1キロほどの所にある、一部の人間と、その人間が連れてきた者しか入れない、奇妙な建物
ここで神(かどうかはわからないけど、俺はそう呼んでる)に過去の俺を会わせる
神はすぐ現れた
今の俺を子供っぽくしたような姿で
俺を見るなり神は全てを悟って、過去の俺に、助かる方法を話す
神は人間の体が欲しかったらしい
とある事情のために必要なんだそうで
だから、過去の俺の体と、自分の体を交換しようと提案する
交換すると、過去の俺の体は構造が根本的に変わり、病気などとは無縁の神の体になる
そして、神の体には過去の俺が入る
そうして神と同等の存在になるのだ
問題は、体を交換したら二度とは戻れないということ
神は俺として生きなければならないし、俺は別人として暮らさなければならない
神の力で、神のものだった体はプロフィールを与えられ、前から社会で生活していたかのように現実が書き変わるようだから、生活の心配はいらないし、俺も実際困らなかった
そして、過去の俺の判断は早かった
死ぬくらいなら別人として生きるほうがマシってね
今もその考えは変わらない
過去の俺は神と体を交換し、俺はそれを見届ける
過去の俺は新たな体を手に入れると、神に促されて建物から去っていった
残ったのは俺と神
神は俺を元の時間に戻してくれるらしい
よかった
このままは嫌だからな
俺が安心していると、神からとんでもない発言が出た
「俺はさらに未来のお前だよ
俺を救うために、もうひと仕事、頼んだからな」
気づいたら元の自宅にいた
俺、どうなっちゃうの?
未来の俺、なにがあったの?
というか、今俺として生活してるのって、結局俺自身だったんだ……
とんでもなく長い人生になりそうだなぁ
9/24/2025, 12:54:58 PM