『風に身をまかせ』
命の行方を、遠くから見つめていた。
黄昏の空に輝く夕日が、背を並べてゆらゆら揺れる稲穂の海を、黄金色に輝かせる。
一人一人が煌めきながら、ただ大きく巡る運命の中で、誰にも気付かれず、小さく揺れている。
列車の車窓から吹き込む秋風は、無愛想に冷たい顔をしながらも、優しくて穏やかで。
風が稲穂を柔らかく揺らして、不意に強く吹き付けた風は、次に稲穂から稲の礫を空へと舞いあげる。
もう一度、柔らかな風が、稲穂を揺らし始める。
きらきら、ぶちぶち、ゆらゆらと。
輝きながら、傷付いて、揺らされて。
だけどきっと、そういうものなんだろうとも、思う。
温かい顔をしながら、冷たく突き刺してきたり。
冷たい顔をしながら、温かく包み込んでくれたり。
私は、どれだけ癒されるのだろうか。
あなたは、どれだけ傷付くのだろうか。
私達は、どこへ辿り着くのだろうか。
いつだって、風は未来へと背中を押してくれる。
宛先はない。
辿り着くべき夢もない。
ならば、もう身をまかせる他には無い。
地獄へ誘われる事もあるだろう。
だけど、世にも美しき黄金色の絶景に、出会える事もある。
ひっそりと揺れる稲穂から視線を逸らして。
ゆっくりと、瞳を閉じる。
この列車もどこへ辿り着くのか分からないが。
運命の流れに命を任せる人生も、時には悪くはないだろうと、そう思ってみたりもする。
5/15/2026, 1:26:24 AM