私、永遠の後輩こと高葉井が住む東京に、先日久しぶりに雨が降った。
スマホの天気予報によると、来週も来週で数日の雨が続くらしくて、
曇った物憂げな空が、当分の間、続くらしい。
更に東京は先々週からスギ花粉のシーズンが開始。
量としては、まだまだ酷くはなってないらしいけど、重度な花粉症持ちのフォロワーの中には、さっそく症状が出始めてるってポストがあった。
最近動画アプリで鼻うがいの広告見るけど
アレってぶっちゃけ効くのかな(物憂げ)
あと避粉地ってなに( )
ニュース動画で観たけど標高1000メートルより上はスギ花粉少ないってホント( )
「あらぁ、高葉井ちゃん、スギ花粉持ち?」
「多古副館長は大丈夫なんですか」
「アタシは何も気にならないわ。
アレが良いらしいわよ。ゴボウ。食物繊維」
「食物繊維」
「ゴボウ茶も良いらしいから、アタシ作ってみたのよ。皮付きゴボウをスライスして乾燥させて。
フライパンで乾煎りして完成らしくて。
諸事情で見事に空焼きしてたわ」
あーだこーだ、云々。
私の職場、私立図書館の中にある、食堂付き飲食スペースで、花粉症対策ランチが今年も登場して、
さっそく職員価格で頼んで食べてたら、
オネェな副館長、多古副館長が私を見つけて、
中くらいで薄めの紙バッグを持って、私の向かい側に座った––副館長もこれからランチらしかった。
「もうホントに憂鬱だったわ。穴空いたもの」
紙バッグの中は、新しいフライパンらしい。
「乾煎りしてる間に世界線管理局関連で連絡が来るでしょ?対応してたら別件来たでしょ?
話し込んでたら、パン!ですって。
やだわぁもう」
「せかいせん かんりきょく?」
「あら言ってなかったかしら。こっちは兼務よ。
向こうで法務部やってるの」
「かんりきょく……??」
物憂げに空焚きしたフライパンを観察する多古館長が、ぼーっと頭に浮かんでくる。
「すごいのよ。火を止めた後も、パキパキって。
アンタは気をつけるのよ」
よほど衝撃的だったのか、多古副館長は私に、そのとき撮った写真を見せてくれた。
空いてたのは、小さな穴だった。
私は空焚きしたことがないから、ぶっちゃけよく知らないけど、おっかない音がするらしい。
そりゃそうだと思う。だって金属に穴だ。
多古副館長の物憂げな空焚きは、それはそれは、大事件だったんだと思う。
「同じ間違いをしないように、アタシ、今回は鉄製のフライパン買ったわ」
「重くないですか」
「でも空焚きオッケーらしいもの。あとでシーズニングしてもらうの」
「しーずにんぐ?」
「そう。シーズニング」
これからはジャンジャン高火力料理作ってやるわ。
副館長はそう言って、ぱくぱく、豚の生姜焼き定食を食べ始めた。
私も私でシーズニングって知らなくて、パッと調べて、スマホをしまって、
それから、春の花粉対策ランチに付いてきたお茶に、最初に口をつけた。
「あっ。ゴボウ」
「なに。ゴボウ茶?」
今朝かもっと前か知らないけど、物憂げ空焚きをやらかした副館長が、私のお茶を見てる。
結果として副館長、ゴボウ茶だけ単品で注文して、
2杯くらい、飲んだみたいだった。
2/26/2026, 6:58:30 AM