六月の帰路

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夕日が落ちていくのを待っている
蝉の声は段々と減っていく
人は影と共に黒く塗りつぶされたように見える
僕の周りにも段々と黒が増えてきて
何も見えなくなる
僕がどこにいるのかも分からなくなる
月は目を閉じている。

僕はその時、独りな感じがする。
星は見えない
ただ孤独だけが僕の隣に座っている
隣にいてくれるから、僕は悲しくないんだと思う

もしかしたら、その隣にはカラスが居るのかもしれない
そこには真っ黒に塗りつぶされたキャンバスが置かれているのかもしれない。
存在するか分からないものに、僕は身を委ねられたら
寂しくないのかもしれない

夜という名の暗闇は、
たくさんの文字で塗りつぶされているキャンバスで、
水が垂れても、それは消えることはなくて。

でも、段々と後ろの蜜柑色が顔を出す。
消しゴムで僕は消せなんて言っていないのに
ひとりでに消されてしまう文字は、跡として僕の胸に書き込まれる。

僕の隣にはカラスもいなかったし
キャンバスもなかった。
そこにはただの孤独しかなかった。

でも僕はその孤独が好きだから、
ひとりでいたい。

7/31/2022, 4:04:16 PM