moon 《設定パクリ厳禁》

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僕は逆鬼《あまのじゃく》といって、周りの普通の鬼とは少し違う。
とても凶暴といわれて、他人は僕らを避けてきた。
そんな僕にも友達がいた。同じ逆鬼のチカト。
内気な僕と活発で賢いチカトはでこぼこコンビだった。

そう、僕にも友達がいたのだ。かつて。
僕ら逆鬼は、12歳~15歳頃に成長期がある。いや、これは人間にもあるのかもしれないが、逆鬼のそれは人間のそれとは比べ物にならない。
成長期はいわば覚醒期。逆鬼の本能、殺人欲求が本格的に現れてくる時期だ。
チカトはそれに耐えきれなかった。

このままではいつか誰かを殺してしまう。それが俺にははっきり分かる、自分のことだから。そうなる前に、悪の芽は早めに摘んでおく。

という手紙を遺して自殺した。
あいにくチカトには正しいことが分かる賢さと、悪状況を打破できる行動力があった。

僕はしばらく熱を出した。くらくらする頭で考えた。僕も死んだほうがいいのかもしれない。チカトが判断したことだからきっとそれが正しい。
それは別によかった。でも、どうしても腑に落ちないことはあった。
あんなに優しく賢く正しいチカトが、死んだほうがよかったなんて思えない。ここで僕まで死んだら、それが正しいことになったみたいで、つまりチカトの自殺も正当化してしまうんじゃないかと思った。

僕は生きることにした。
生きててもよかったんだよ、と友達に伝える。
たったそれだけのために。

10/26/2024, 7:38:18 AM