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愛する夫の命の灯火が,あとわずかで消えることは,妻にも,はっきりわかった。夫は,最後の力を振り絞って妻に語りかけた。
「私の人生は,お前のおかげで幸せだったよ」 「これまで内緒にしていたが,銀行の貸金庫の中に,
売れば大金になる宝石がある。そのお金を生活費にあててくれ」 妻は,優しく微笑むと言った。しかし,その言葉は,夫の耳に届いたかはわからなかった。握った夫の手は,すでに冷たくなっていたからだ。 「貸金庫の宝石のことは知っているわ。だから,長い時間をかけて,あなたに毒を飲ませ続けてきたんだから」

5/6/2023, 12:18:00 PM