初恋の日
僕の世界には色がついた。
灰一色だった世界が、モノクロ写真のようだった世界は、鮮やかに息づいた。
仕事を終えた太陽は今日もひときわ強く世界を照らし、黄昏色が僕らを包む。
今までもずっとたわいもない話をしてきたけれど、いつしか君の目を見る度になぜだか苦しくなって。艶やかな黒髪が風になびく度に目を奪われて。
ころころと鈴を転がすかのような笑い声に、僕の胸は強く高く脈を打つのだった。
走ってきた僕を見て、ゆっくりで良かったのに、とどこかくすぐったそうに微笑む君。
夕暮れの校舎、少しだけ開いている校門。
長く伸びた影ふたつ。
君は今日もたわいのない話をしている。
返事をしようと思うのに、からからに乾いた喉はうまく言葉を絞り出せない。
やっと出た声はすっとんきょうに裏返っていて。
どうしたの、そう、くすくすと笑う君に触れられたのならば。
ああ、僕は恋をしたのだ。
そう思う他なかった。
こんなにも胸が痛くて苦しくて、でも君が笑いかけてくれる、ただそれだけで天にも登る心地になる。
込み上げる愛しさのままに君を抱きしめてしまいたい。
思わず動かしてしまった手で頭を掻き、僕は笑う。
君が、どうしたの、今日ちょっと変じゃない?
そう、首を傾げるのを見つめながら。
5/7/2024, 11:51:50 PM