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3月のはじめ。窓の外にはまだ雪がちらちらと降っていて、ときより雲間から出る陽の光に反射してきらめいている。その景色に見惚れていると、なんだか急に懐かしい気持ちに駆られた。確か、あの日もこんな景色だったような気がする。遠い昔へと思いを馳せていると、だんだんと眠気が襲いかかってきて、、、抗うことができず、冷たい畳の上に横になった。

甘い香りが鼻をくすぐり目を開けると、薄紅色の景色が広がっていた。何千何万もの桃の花が咲き乱れていたのだ。さっきの甘い香りはどうやらこれらしい。ときどき吹く風にのって、花びらが舞い落ちる。桃の花はほとんど匂いを感じないと聞くが、香りを強く感じるのはあまりにもたくさん咲いているからだろうか。
【未完】

3/4/2024, 8:36:59 AM